建築後37年が経過し、放置されていた倉庫を住宅に用途転用(conversion)、再生するプロジェクトです。当初、新築を予定していましたが、希望する立地条件は人気の住宅地で条件に合致する物件を探すのは困難が予想されました。そんな時、倉庫(自転車販売店、20坪の2階建ての倉庫)付きの土地が候補の一つにあがり、住宅として計画可能かどうかを検討。内装は一切施しがないので軸組が現された状態、水廻りもないので土台や柱などの状態も良好。土地の大きさは予定より1.5倍程度もあり、価格も割安で面白そうだったのでメリットの方が大きいと判断、すぐにOKを出し取得していただきました。階高の関係で、1階はプライベートと水廻りを配し、天井高は既存床下地材に塗装現し仕上げとし確保。外部開口部は、限定的に効率よく太陽光を取り入れ、1,2階南面の大開口部には、動線を重視した土間を有効に配し、温水による床暖房を施し、1,2階全体の気積を考慮し温熱環境の計画をたてました。2階はパブリックゾーンとして開放的で家族が自由に自然に集まり会話が生まれる空間づくりに心がけました。人口減少が続く地方都市では、今後、加速度を増し高齢化率が上昇し、子供や若者の数が減少、労働人口の減少により、街のエネルギーも失われていきます。人口減と共に、大きな社会問題に上げられるのが空き家の増加です。持ち主を失った建物は、急激に老朽化を進め周辺環境に悪影響を及ぼしてしまう可能性が高いのです。しかし、未だ使えるものを簡単に壊してしまうことには抵抗がありますし、リノベーションで数十年利用できるポテンシャルはあります。未だコロナ禍の中から抜け出せずにいますが、今回のこの経験から私たちは、忘れかけていた大きなものを取り戻すチャンスなのかもしれません。経済優先の物質社会の時代から、生活や暮らし、街づくりの質を求められる時代に変革していくのではないでしょうか。古いからと言って簡単に捨ててしまうのではなく、ちょっと立ち止まり、深呼吸をし、見る角度を変えると新しいものが見えてくるはずです。conversionやrenovationが街に新しい風を運んできてくれるファクターになるのかも知れません・・・・・
2020.12
Timber structure
121.17㎡
Asahikawa.Japan